1993 年 7 巻 7 号 p. 833-838
症例は62歳男性.1988年4月肺結核発症.多剤耐性結核にて排菌止まらず, 1990年8月21日に右肺上葉切除施行.その後気管支瘻となり同年10月9日に気管支瘻閉鎖, 胸郭成形を行うも気管支瘻再発し右MRSA膿胸を併発, 同年12月20日右腋窩前方に膿胸腔を開放した.連日の包交にて創面の浄化をはかり, 創面MRSA感染は持続したものの, 1991年4月2日創面掻爬, 気管支瘻閉鎖を行い, 同4月16日Scapular Flapにて開放創面の被覆閉鎖を施行した.手術手技は右肩甲部にてcircumflex scapulararteryの横走するcutaneous branchを中心に14×8cmの皮膚弁を作成し, 腋窩背側部の筋間にトンネルを開け有茎にて創面へ誘導, 創縁にflapを全周性に縫合し肺raw surfaceを含む浅い開放創全体を被覆した.術後MRSAによる小膿瘍が創縁に生じたが, 数回の小処置にて現在創下端に僅かな皮膚瘻を残すのみで, 開放創の閉鎖にほぼ成功した.