1995 年 9 巻 1 号 p. 19-28
肺摘除術後気管支断端の治癒における粘膜接着の必要性と自動縫合器の有用性について雑犬を用い検討した.気管支断端を結節縫合にて閉鎖したA群, 粘膜接着を確実にする日的でA群にマヅトレス縫合を追加したB群, 自動縫合器にて閉鎖したC群に分け, 肉眼的所見, 組織学的所見, 耐圧性, hydroxyproline (hyp) 量から断端の治癒過程を評価した.C群は炎症反応が最も少なく線維組織の生成が早く, 耐圧性, hyp量でも優れていた.A群はC群より炎症反応が強度であったが, 線維組織耐圧性, hyp量ではC群と著差はなかった.B群は全ての点で劣っていた.全群で粘膜面の癒合は不良であり, 粘膜同士が相対する部分では粘膜上皮の嚢状遺残や洞状の間隙を認めた.以上より自動縫合器による断端閉鎖は手縫い縫合と著差はないことが示された.また粘膜接着の効果はみられず, 断端治癒上問題であり気管支瘻発生の危険性を示唆していると考えられた.