日本呼吸器外科学会雑誌
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原発性非小細胞肺癌における p53 蛋白発現と予後との検討
米田 敏草野 卓雄白日 高歩菊池 昌弘
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1995 年 9 巻 1 号 p. 9-18

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抄録

癌抑制遺伝子であるp53は, 多くの癌において異常を来しており, 肺癌においても例外ではない.今回我々は, 手術的に切除された原発性非小細胞肺癌181例において, 免疫組織学的に異常p53蛋白の発現を調べ, 臨床病理学的因子と比較検討を行った.また, 細胞増殖能を示すDNAポリメラーゼδの補助蛋白であるProliferating Cel lNuclear Antigen (PCNA) の免疫組織学的染色による発現とも比較検討した.年齢, 性, 喫煙歴, 腫瘍発生部位では特に有意差は認められなかったが, 組織型における発現率は腺癌44/97 (45%), 扁平上皮癌35/54 (65%), 腺扁平上皮癌12/22 (55%), そして, 大細胞癌6/8 (75%) で, 特に腺癌に比し, 扁平上皮癌に有意に発現が認められた (p=0.034).また, TNM因子, stage および組織分化度との相関は, 有意差はないものの進行例によく発現をみる傾向があり, また, 扁平上皮癌においては低分化型に良く発現をみた.PCNA発現との関係では, p53異常発現の高いものほどPCNA発現も高くなり (p<0.007), 増殖能とも関連のあることが示唆された.予後においては, p53染色陽性例は陰性例に比し, 有意に予後不良で (p<0.04), 陽性率が増加するに従ってより予後不良であった.以上より, p53の異常は, 肺癌の増殖, 進展に重要な役割を担っており, 予後を規定する因子の一つであることが示唆された.

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