1995 年 9 巻 1 号 p. 29-34
当科で経験した胸腺癌7例について, 臨床病理学的検討を加え, さらにこれらのパラフィン包埋切片を用いて, flowcytometry (FCR) にごよる, Ploidy patternを解析した.また, 癌抑制遺伝子P53蛋白の発現について, 免疫組織染色を行なって検討した.年齢は, 47~71歳 (平均年齢56.3歳), 男性3例, 女性4例, 組織型は扁平上皮癌5例, 大細胞癌1例, 小細胞癌1例で, 病期はII期1例, III期3例, IVa期, IVb期がそれぞれ1例であった.胸腺癌の平均生在期間を当科で経験した浸潤型胸腺腫10例と比較すると前者は27.2ヵ月, 後者は75.2ヵ月で, 有意に前者が予後不良であった (p=0.016). Ploidy pattern, p53蛋白発現は, diploidy が2例, p53陰性が2例, aneuploidyが5例, p53陽性が5例であった.胸腺癌は高増殖能で進行例が多く, その進展, 増殖には p53 遺伝子の不活化が関与している可能性が示唆された.