1995 年 9 巻 1 号 p. 74-79
症例は41歳の男性で, 咳嗽を主訴に来院した.胸部X線写真で右肺門部に腫瘤状陰影を有し, 気管支鏡検査で右B3にポリポイド病変が認められ, 同部の生検により腺癌と診断された.肺腺癌の術前診断で右肺上葉切除およびリンパ節郭清術を行った.切除標本では腫瘍は6×50×45mm大で黄白色を呈し, 周囲との境界は明瞭で, 割面には出血壊死巣を認めた.組織学的には胎児肺に似た上皮性成分と間葉系成分よりなる腫瘍細胞を認め肺芽腫と診断した.リンパ節転移はみられなかった.術後1年2ヵ月の現在再発の徴候はなく健在である.