1995 年 9 巻 1 号 p. 80-86
症例は49歳女性.胸痛を主訴とし近医より胸部異常陰影を指摘され入院.血清NSE値は17ng/mlと高値を示した.画像診断上, 前胸壁に浸潤する左S3の腫瘤状陰影とともにN3領域に及ぶ広範な縦隔リンパ節の腫大を認め, 左胸腔には胸水が貯留していた.ガリウムシンチグラムでは, 腫瘤に一致した部位と縦隔に高度な集積を認めた.左B3cは表面顆粒状の腫瘍で閉塞しており, 生検により大細胞癌と診断した.なお, 胸水細胞診は陰性であった。cT3N3M0, Stage IIIBと判断し, CDDP, VDS による化学療法と原発巣ならびに両側縦隔に対する放射線照射を同時併用で開始した.骨髄抑制のために化学療法は1クールで中止としたが, 放射線照射は69Gyまで行った。治療により, 腫瘤影の著しい縮小とともにNSE値は正常化しガリウムの異常集積も消失した.良好な補助瘻法の下で局所制御を高めることを目的として, 正中アプローチにてR3bの郭清と左上葉切除を行った.摘出標本の病理組織学的検討では, 腫瘍・リンパ節内には悪性細胞は全く存在せず線維化を伴った瘢痕組織のみであった (ypT0N0M0, Ef. 3).