抄録
全身各部位に, 原発巣と思われる病変を認めない, 単発縦隔リンパ節腺癌の一例を経験した.症例は61歳, 男性.主訴は発熱。右中下葉内リンパ節, 上縦隔リンパ節, 左肺門リンパ節腫脹を認めたものの, 全身他部位の異常を認めず, 右傍気管~気管前リンパ節が特に大きく8cm大のため診断を兼ねて手術を施行.術中腺癌の診断を得, 右肺中葉, あるいは下葉原発T0N3bM0の肺癌と判断し, 右中下葉切除, R3bを施行.病理診断では他のリンパ節は全てサルコイドーシスで, 肺内に悪性所見を認めず.癌細胞所見より腎癌の転移が疑われたが, 腎には異常を認めなかった.現在術後14ヵ月, 腫瘍マーカーは正常値に復し, 担癌徴候は無い.若干の文献的考察を加えて報告する.