1995 年 9 巻 2 号 p. 205-211
浸潤型胸腺腫切除術後3ヵ月で重症筋無力症および赤芽球癆を発症した症例を経験した.症例は44歳女性で左横隔膜上の腫瘤を発見され入院.術前, 重症筋無力症や貧血は認めなかった.手術所見では, 胸腺左葉より発生する原発巣は左肺上葉に癒着し, 主に壁側胸膜に5~10mの多数の播種巣が存在し, また横隔膜上にも手挙大の転移巣を認めた.腫瘍は横隔膜から剥離困難であり, 腫瘍および横隔膜合併切除, 拡大胸腺摘除術を施行した.病理学的には小リンパ球主体の組織像で病理病期はIVa期であった.術後再発予防のため胸腔内留置カテーテルより抗癌剤 (MMC, CDDP) の間敏投与を行っていたが, 術後約3ヵ月目に複視・易疲労感が出現し, 精査の結果, 重症筋無力症および赤芽球癆の診断を得た.抗コリソエステラーゼ剤とステロイドおよび輸血療法で, 両者の著明改善をみた.現在ステロイド得与のみで外来経過観察中であるが.腫瘍の再弊・筋無力症・貧血の症状を認めていない.