抄録
本稿は、外国語教育の学習成果がどのように獲得されるのかを考察したものである。事例として、北米の日本研究者・日米間の実務家育成を目的とする日本語教育機関において実践されている「待遇表現」の指導を取り上げる。その中で、日本語学習を通じて「丁寧な私」を獲得したという認識が、どのように形成されたかを探る。まず「待遇表現」の授業を行った上で、学習者に授業録画の視聴を伴うインタビュー調査を行い、批判的文化アウェアネスの概念を用いて分析を行った。その結果、待遇表現の指導という教育的介入は、学習者がそれまで経験してきた文化体験と混ざり合い、活発に作用することで、批判的文化アウェアネスを顕在化させることに寄与していることが明らかになった。