日本の大学教育では,学生の多様性及びニーズに対応した学習支援の確立が喫緊の課題である.特に近年は,学長を中心とした教学マネジメントに沿った教育が求められている.本研究の目的は,教学マネジメントにおける学習支援の方針の明確さと支援策の重要度を明らかにし,その関連性を検討することである.全国の学士課程教育を対象とした質問紙調査を実施し,合計267大学からの回答(有効回答率34.1%)を得た.分析の結果,主に次の3点が明らかになった.⑴教学マネジメントにおける学習支援の方針が明確(「とても明確」及び「ある程度明確」)な大学は約66%であり,支援方針の明確さは,正課教育における学習支援の重要度(ρ=.47)及び学習支援の全体的な有効度(ρ=.56)と中程度の正の相関が見られた.⑵教員との面談やスタディスキル等の授業科目などの正課教育における支援策の方が,正課外の支援策よりも重要視されていた.⑶教学マネジメントにおける支援の方針の明確さと具体的な支援策の重要度の間にも関連性が見られた.以上により,教学マネジメントにおける学習支援の方針の明確さ,支援策の重要度及び学習支援の効果の点で関連性があることが見い出された.