本研究では,A大学B学部の2020年度および2021年度の入学生を対象に,前期開始時の学習動機や協同作業に対する意識が,同終了時の大学適応感,1年次における学修成果(GPAと汎用的技能)とどのように関連しているのかについて検討をおこなった.社会が大学生に求める汎用的技能の測定にはPROGを用いた.そのうえで,学生調査や教学データ(GPA)とPROGを併用することにより,外部指標に照らして汎用的技能の習得度を把握し,学修成果の諸側面と関連する要因について検討することをねらいとした.
その結果,入学後の適応感は,汎用的技能のコンピテンシーならびに学業成績(GPA)の双方と関連すること,学生の有する学習動機と協同作業についての肯定的認識は,相互に関連しつつも,適応感や汎用的技能,GPAとの関連のしかたには,違いがあることが明らかとなった.すなわち,“自律的な”学習動機は,PROGのコンピテンシーに直接影響する一方,協同作業についての肯定的な認識・態度は,大学適応感を介して間接的に,PROGのコンピテンシーの側面および1年終了時のGPAに影響することが示された.これらの結果を踏まえ,1年生の大学適応感育成支援の重要性・必要性と本結果の限界や今後の課題について考察をおこなった.