本研究は,発達障害のある大学生の大学生活継続に影響する苦戦しやすい大学環境の特徴を明らかにし,今後の支援のあり方について提案することを目的とする.全国780の大学(発達障害のある学生の支援担当者)に無記名式のアンケート調査を依頼した.調査内容は,①発達障害のある学生が苦戦しやすいと思われる大学生活特有の環境や制度20項目(4件法),②発達障害のある学生が苦戦しやすいと思われる大学生活特有の環境や制度(自由記述),③発達障害のある学生やその保護者から支援や配慮の要請があったものの,大学が行う支援や配慮の対象ではないと判断した要請(自由記述)であった.161校から回答を得た(回答率およそ20.6%).①は回答を1~4に数値化し,各項目の平均値を算出した.その結果,20項目は概ね苦戦すると捉えられていた.さらに因子分析の結果,「主体性が求められる環境」「画一的ではない授業システム」の2因子が抽出された.②,③はKJ法を援用して整理した.その結果,②では「学生自身で対応しなければならない場面の多さ」等の6つの大カテゴリー,③では「生活上の支援」等の5つの大カテゴリーを得た.これらの結果から,今後の支援として,大学を中心とした支援の幅を広げる工夫,大学環境についての情報発信,大学移行期以前からの大学適応力の育成について提案された.