大学教育学会誌
Online ISSN : 2758-6510
Print ISSN : 1344-2449
事例研究論文
個別の学習支援が大学生の学習方略に与える効果の検討
─Student Successに着目した指標開発から関与の効果測定まで─
山野 洋一岸岡 奈津子松本 清深谷 麻未茅根 未央木原 宏子西田 祐太郎渡邉 あい子石田 明菜
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2023 年 45 巻 2 号 p. 92-102

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抄録

 学習方略はStudent Successに寄与する重要な要因である.本研究は,1Student Success Program(SSP)を事例としてStudent Successに着目した個別の学習支援が学生の学習方略に与える効果を,量と質から検討する混合研究法を用いて,明らかにすることを目的とした.研究Ⅰでは,Student Successに欠かせない学習方略を測定する尺度を作成し,全国2107名を対象に調査を実施した.その結果,12項目4因子構造が確認され,高い信頼性と妥当性を有する尺度の開発に成功した.研究Ⅱは,その尺度を用いて,支援を受けた42名の学生を対象に学期開始期から学期終了期にかけて,どのようなプロセスで学習方略が変化するのかを検討した.個別の学習支援を受けた学生は学期終了期に向けて,自身の学習を振り返る方略が身につき,それが他者に支援を求める方略に効果があり,さらに他者に支援を求める方略は,計画を立てて,実行する方略に効果があるという同時効果モデルが確認された.研究Ⅲは,132名の支援を受けた学生の自由記述データから支援内容の質的分析を行った.質的分析から個別の学習支援は,学生の学習方略が上達する関与だけではなく,学習を阻害するような不安を除去する関与が認められた.教職員の情緒的関与が学生のStudent Successに結びつくことが本研究から明らかとなった.

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© 2023 一般社団法人 大学教育学会
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