大学教育学会誌
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事例研究論文
卒業研究の評価結果に基づくカリキュラム改善の方法と課題
西野 毅朗山田 嘉徳
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2024 年 46 巻 1 号 p. 151-161

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抄録

 本研究は,卒業研究の評価結果をカリキュラム等の改善に生かす上での方法および課題を明らかにすることを目的とする.全国の5370学科の教育責任者を対象とした郵送法による質問紙調査を実施し,1446件の回答を得た.その中から,卒業研究等の評価結果のカリキュラム改善等への活用方法と,活用できていない・していない理由に関する571件の自由記述を対象として,焦点的コーディングを中心とした質的分析を実施した.

 分析の結果,活用学科は評価により学生の能力・関心・ニーズを把握し,FDや各種会議等を通じて組織的に共有・検討・議論し,卒業研究科目やそれに関連する科目の改善,基礎教育の充実につなげていることが示された.一方,未活用学科は,様々な多様性の問題,組織的な問題,カリキュラム改善等への活用の困難さから,卒業研究を個別教員・研究室に一任する状況にあることが明らかになった.以上の結果から,卒業研究の評価結果をカリキュラム等の改善につなげる方法と課題は,カリキュラムマネジメントの連関性と協働性に合致し,重層性も考慮すべきという示唆が得られた.その具体的な内容と,卒業研究の結果を活用することの必要性を検討することの重要性が見いだされたことは本研究の新しい知見といえよう.

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