2008 年 20 巻 4 号 p. 11-21
要旨:本研究では,水酸化鉄による被膜で覆われた鉄鋼スラグについて実験を行い,それらの結果を基にしてリン吸着能力に対するpH と海水の影響を検討した。その結果,鉄被膜で覆われた水砕スラグのリン吸着能力が,それと接する水溶液のpH によって最も強く影響されることがわかった。また,鉄被膜で覆われた水砕スラグのリン除去率は,水溶液のpH によらず,時間の経過に伴い最小値に達するまで減少し,その後は最小値を長期にわたって維持することが判明した。さらに,海水を通水した場合には,蒸留水を通水した場合に比べて,リン吸着能力が低下することが確認された。その原因としては,吸着部位における陰イオンの競合よりも,フミン酸のような有機物質の影響が示唆された。このほか,自然環境に影響を与えずリン吸着に適したpH の値を維持する方法として,水溶液を曝気する方法が適用できることがわかった。