要旨:日本は地震活動や火山活動が活発で災害ポテンシャルの高い国土であるが,特に沿岸域は軟弱な地盤であるために,地震等による地盤災害の影響を受けやすい。本論文では,公開されている地理空間情報(特に地形分類情報)を活用して,地域の災害脆弱性を評価する手法について検討した。遠州灘を例として東南海地震(1944年)を対象に,土地条件図の地形分類データと住家全壊率等被害線図とを組み合わせて地理情報システム(GIS)による解析を行った。その結果,段丘や扇状地では建物被害が比較的軽微で,谷底平野・氾濫原,海岸平野・三角州,自然堤防等で建物被害が大きいという結果になった。自然堤防で住家全壊率が高い,谷底平野・氾濫平野の方が海岸平野・三角州よりも有意に住家全壊率が高いなど,地形分類だけでは説明出来ない被害状況があったため,ボーリングデータから対象地域の浅層地質を明らかにして被害状況とのオーバレイ解析を行ったところ,軟弱地盤(15m以浅のN値10以下の泥層)が厚く堆積しているところでの被害が大きくなることが分かり,地形分類を単純にハザードリスクに読み替えるだけでなく,表層地質の影響や地形発達過程を考慮する必要があることが分かった。