2003 年 15 巻 1 号 p. 1-12
沖縄の海岸を縁取り、地域の生活文化を支えるサンゴ礁が危機に瀕している今、多くの研究機関・研究者がサンゴ礁のモニタリングを実施している。それらがサンゴ礁の保全と賢明な利用に必要な情報を収集しているかどうかを明らかにするため、サンゴ礁に関する情報の利用者から、必要とされる情報の種類について聴取し、一方、沖縄のサンゴ礁のモニタリングに関する既存の資料から、どのような情報がどのような方法で収集されているかを調べ、両者を比較した。その結果、必ずしも必要とされる情報が収集されていないこと、特に人間社会に関わる変数のモニタリングが欠落していること、総合的で長期的なモニタリング戦略が必要とされることなどが示された。これらを満たすためには、行政・研究者・市民による協同をとおして、サンゴ礁の保全と利用に求められる情報を明確化・優先順位付けし、それに沿ったモニタリング方法とサンプリングデザインを吟味し、データ収集、データベース構築・管理、GIS による情報の視覚化、発信の体制を構築する必要がある。