2019 年 23 巻 1 号 p. 82-91
本研究は,1型糖尿病患者のインスリン療法への感情作用を明らかにすることが目的である.
総合病院に外来通院をしている1型糖尿病患者6名を対象に,インスリン療法に対する思いについて半構成的面接を行い,感情が表れている103場面を抽出した.その場面の質的帰納的分析を行い,インスリン療法に対する17の感情作用を抽出した.それらの感情作用はインスリン療法の実践を前向きにする力となる【正の感情作用】と,インスリン療法の実践を後向きにする力となる【負の感情作用】に分類できた.その結果,「正の感情作用」「負の感情作用」のカテゴリが抽出された.インスリン療法において「負の感情作用」が抽出されたことから,患者にインスリン療法が負担や苦痛を生じさせることが推察できた.患者がインスリン療法を継続するためには「正の感情作用」をインスリン療法への動機づけとし,「負の感情作用」を患者の日常生活から減らす援助内容が必要である.