日本糖尿病教育・看護学会誌
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23 巻, 1 号
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実践報告
  • 山﨑 優介, 中川 美紀, 上田 淳子, 田村 真佐美
    2019 年 23 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/07/02
    ジャーナル フリー

    糖尿病地域連携クリニカルパスでA病院に紹介となり,患者機能自身がもの忘れを自覚している場合や,家族・医療スタッフが患者の認知症を疑わせる症状を感じた場合に,井門式簡易認知スクリーニング検査を行い,認知症地域連携クリニカルパスと併用する取り組みを行っている.1年で7名が対象となった.糖尿病治療は1名がインスリン頻回注射となったが,その他はBOTもしくは週1回GLP-1受容体作動薬の注射薬管理となり,6名でHbA1c(NGSP)が改善傾向を示した.全症例認知症治療薬が開始され,3名が介護保険新規申請,3名が新規介護サービスを導入した.自己注射が可能だったのは,元々自己注射をしていた認知症患者か,新規注射導入のMCI患者であり,その傾向が示された.本取り組みにより,認知症の程度に合わせた糖尿病コントロール目標値の設定や,治療法の選択,療養指導方法の選択を容易にするだけでなく,認知症の早期診断・対応の実現に寄与できる可能性が示唆された.

研究報告
  • ~病みの軌跡モデルを用いた検討~
    式田 由美子, 脇 幸子, 濱口 和之
    2019 年 23 巻 1 号 p. 7-17
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/07/02
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究では,介護老人保健施設(以下,老健と略す)に長期入所する高齢者が今後の人生行路の方向づけのために糖尿病とともに生きる自身の人生をどのように意味づけているかを明らかにする.

    【方法】糖尿病をもち老健に1年以上入所する高齢者2名を対象にインタビューを行い,逐語録から,管理に影響する条件,編みなおし,軌跡の予想など,病みの軌跡の構成要素を抽出し,解析した.

    【結果】両事例とも,長い人生を糖尿病とともに生活する中で,さまざまなライフイベントに遭遇したり,合併症を発症し,それらが管理を促進したり,妨害したりと交錯し,その中で形成された価値観や信念が編みなおしに関係していた.また,今後の見通しが立たない中でも在宅復帰の希望を持ち続けていた.

    【考察】糖尿病をもち老健に長期入所する高齢者に対しては,対象者の糖尿病とともに生きてきた病みの軌跡を理解し,本人の希望や願いを支える援助を提供していく必要性が示唆された.

  • 出野 慶子, 髙山 充, 河上 智香, 天野 里奈, 中村 伸枝, 金丸 友
    2019 年 23 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/07/02
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,インスリンポンプを使用している1型糖尿病をもつ小学生の学校生活の現状を明らかにし,学校生活における支援について検討することである.インスリンポンプ療法を実施している小学生6名を対象とし,家族会主催のキャンプにおいてグループインタビューを実施した.その結果,インスリンポンプの使用に関連して困ったこととしては,【ポンプトラブル】【自分に関心が集まる】【クラスメートの言動に困惑】【補食に対する羨望】の4カテゴリーが抽出され,学校関係者のかかわりに対しては,【特別扱いされたくない】【過剰な心配は不要】【病気の子どもと見られる困惑】【適切な対応の要望】の4カテゴリーが抽出された.学童期の子どもにとってクラスメートとの関係性は重要であり,クラスメートの理解・協力が得られる支援,および学童期の子どもの特徴を踏まえて学校関係者が子どもにかかわれるように支援する重要性が示唆された.

  • 道面 千恵子
    2019 年 23 巻 1 号 p. 25-33
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/08/27
    ジャーナル フリー

    糖尿病患者に対する患者教育において,看護師のビリーフの特徴を明らかにすることを目的とした.

    糖尿病患者に関わる看護師763名に自作の自記式調査用紙を郵送し,有効回答の得られた408名の回答を分析の対象とした調査用紙の構成は,予備研究による研究者自身で作成したビリーフ質問項目と看護師の属性であった.分析方法は,因子分析とノンパラメトリック検定を行った.その結果,患者教育に対するビリーフは5因子あり,【患者の生活改善を支える】【患者を固定観念で捉えない】【患者の興味や意欲に関わるアプローチをする】【患者と関係がとれるように話をする】【患者の潜在能力を引き出す】と命名された.患者教育のビリーフは,年代間,経験年数,教育・指導への関わり度の間に,有意な差を認めた.

    患者教育に対するビリーフの特徴は,看護師の年齢や経験年数が長くなることでビリーフの得点は高く影響があったこと,関わり度の差も影響があったことから,経験は,看護の実践能力の一つとして必須であることが示唆された.

  • 横内 砂織
    2019 年 23 巻 1 号 p. 34-42
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/07/02
    ジャーナル フリー

    本研究は,急性期病院内科外来に通院する高齢糖尿病患者の家族がインスリン療法を代行する過程を明らかにすることを目的とし,対象者10名に半構造化面接調査を行い質的に分析した.その結果高齢糖尿病患者の家族は,インスリン療法【代行前から糖尿病治療を認識する】をしていた.そして【注射の代行開始についての葛藤を持つ】が起こり,【患者が注射できない部分を見定め,必要な代行を開始する】となっていた.家族は《生活の中の注射のタイミングを調整する》など【代行を組み入れた,繰り返しの生活のリズムを作る】を行い,その中には【他者の力を借りるかの判断をする】があった.インスリン療法を代行する家族には,【代行する生活が思うようにならないという思い】や【代行する生活を継続する思い】があった.看護師はインスリン療法を代行する家族に対し,家族の臨時代行の依頼者の相談や,生活のリズムが調整できる具体的な療養支援を行う必要があると示唆された.

原著
  • 細野 知子
    2019 年 23 巻 1 号 p. 43-51
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/08/27
    ジャーナル フリー

    【目的】食事療法の難しさを語る糖尿病者にとっての食事経験を現象学的に記述することである.

    【方法】現象学的看護研究である.糖尿病治療で入院していた4名の定期受診の場面を中心に,入院から約1年間(2015~2016年),参加観察と非構造化面接を実施した.食事に関して何気なく繰り返された表現等からその人の見方を分析し,病者自身はっきり自覚していない次元まで遡り,そこから意味が現われる「地」と「図」の関係とともに,象徴する1名の食事経験を記述した.

    【結果】研究参加者は,1)切実に入院中の食事療法を再現する,2)病院と家における食べ物のありようの違い,3)状況によって食べ方が変わるという食事経験をしていた.

    【考察】糖尿病者はその食事経験の中で,意識的な管理とは別に,身のまわりのさまざまな食べ物に出会い“あれば食べてしまう”世界を生きていた.これまでの治療を通じて学んだ知識は現在において塗り替えられ,多角的に変わりゆく食事療法を経験していた.

実践報告
  • ―高齢独居で片麻痺患者の一事例―
    橋野 明香, 森山 美知子
    2019 年 23 巻 1 号 p. 52-59
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/08/27
    ジャーナル フリー

    片麻痺患者であるA氏は高齢独居であり,血糖管理目的で入院した.慢性疾患看護専門看護師(以下,CNS)がインスリン自己注射を拒否したA氏に行った支援内容を明らかにする.

    包括的アセスメントにより,A氏は自立心の高い女性であり,インスリン自己注射の同意が得られれば手技を工夫して自己注射ができると判断した.

    そこで,動機づけ面接を行い,A氏の持つ両価性に気づかせ,「インスリンをしないといけない」というチェンジトークを引き出した.健康信念モデルに基づき,「罹患性」を強化し「有益性を高める」ための情報提供と食事療法への意欲を承認し,「障害」を軽減させ「行動のきっかけ」を強めるため,薬剤師による教育を依頼し,専用BOXを作成した.

    その結果,「やってみる」「食事療法も頑張る」と目標を設定し,導入に至った.

    CNSは,心理社会的特徴,身体機能を包括的に評価し,動機づけ面接と健康信念モデルに基づいた介入を行い,A氏の変化を促していた.

第23回日本糖尿病教育・看護学会学術集会報告
研究報告
  • 西尾 育子, 中條 雅美
    2019 年 23 巻 1 号 p. 82-91
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/10/18
    ジャーナル フリー

    本研究は,1型糖尿病患者のインスリン療法への感情作用を明らかにすることが目的である.

    総合病院に外来通院をしている1型糖尿病患者6名を対象に,インスリン療法に対する思いについて半構成的面接を行い,感情が表れている103場面を抽出した.その場面の質的帰納的分析を行い,インスリン療法に対する17の感情作用を抽出した.それらの感情作用はインスリン療法の実践を前向きにする力となる【正の感情作用】と,インスリン療法の実践を後向きにする力となる【負の感情作用】に分類できた.その結果,「正の感情作用」「負の感情作用」のカテゴリが抽出された.インスリン療法において「負の感情作用」が抽出されたことから,患者にインスリン療法が負担や苦痛を生じさせることが推察できた.患者がインスリン療法を継続するためには「正の感情作用」をインスリン療法への動機づけとし,「負の感情作用」を患者の日常生活から減らす援助内容が必要である.

資料
  • 田中 理恵, 柴山 大賀
    2019 年 23 巻 1 号 p. 92-99
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/10/18
    ジャーナル フリー

    糖尿病の診断と初期治療を担う国内の診療所において,2型糖尿病の初期教育の実践状況を調査した.教育実施体制,及び系統的文献検討で抽出した初期教育の構成要素22項目を含む質問紙を1,563施設に郵送し,320施設(20.5%)から有効回答を得た.このうち,初期教育を提供する237施設(74.1%)では,診断時から1ヶ月以内に開始し,外来で個別に複数職が複数回関わる形式を主としていた.また,心理社会的適応への支援や定期的な評価が課題となっていた.初期教育構成要素は,226施設(95.4%)から28施設(11.8%)でいずれも実施されていた.病識への働きかけや患者を主体とする取り組みが過半数の施設で取り入れられていたが,行動目標の評価や継続的な支援に関する要素は実施割合が低かった.効果的な初期教育の構成要素を網羅する教育体制や,その他の関連要因を検討した上で,教育環境を整備する必要がある.

研究報告
  • 中村 伸枝, 仲井 あや, 出野 慶子, 金丸 友, 谷 洋江, 薬師神 裕子, 髙橋 弥生
    2019 年 23 巻 1 号 p. 100-107
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/10/18
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,1型糖尿病をもつ年少児の糖尿病セルフケアに向けた親のかかわり尺度を開発し信頼性・妥当性を検討することである.文献検討および予備調査,専門家会議を経て58項目の試行版を作成し,1型糖尿病をもつ1歳~小学校低学年の子どもの親34名のデータを得て,24項目から成る最終版を作成した.主因子法,プロマックス回転により因子抽出を行い,F1糖尿病管理における負担,F2子どもの低血糖対処能力の把握,F3低血糖や血糖値に起因する余裕の欠如,F4幼稚園や学校のサポート,F5糖尿病管理の支えと子どもの将来を見すえたかかわり,F6糖尿病管理と育児の自信,F7子どもの意欲や関心の把握,を得た.24項目のCronbach's α係数は0.84,再テスト法でのPearsonの積率相関係数は0.93と許容範囲内であった.本尺度は,項目数が24項目と少なく,年少児に対する親の認識やかかわり,親のストレスやサポートを包括的に査定するために臨床での活用が期待できる.今後は,より大きなサンプルサイズでの分析を継続し,安定した構造をもつ尺度に洗練していく必要がある.

  • 兵頭 美和, 赤松 公子
    2019 年 23 巻 1 号 p. 108-114
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/10/18
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,糖尿病患者の歯周病に関する知識と口腔内衛生習慣,HbA1c,歯周病の評価得点,歯科受診との関係を明らかにすることであった.歯周病の評価には,歯周病が疑われる症状3項目,歯肉からの出血,歯肉の腫れなどの症状3項目,歯周病を起こすリスク因子6項目で構成されたチェックリストを用いた.同意の得られた100名に対してアンケート調査を行い,歯周病に関する知識との関係を対応のないt検定,またはχ2検定を用いて分析した.その結果,歯周病に関する知識と口腔内観察,歯みがき時間との間に有意差は認められたが,HbA1c,歯周病評価得点,歯科受診との間には認められなかった.

    歯周病に関する知識があるものは,ないものと比較して,口腔内観察を行い歯みがき時間が長いなどの口腔内衛生習慣は優良だったが,歯周病の程度や歯科受診に関連は認められず,糖尿病と歯周病に関する認知度は,さほど高いとはいえなかった.糖尿病と歯周病との関係を浸透させていくためには,歯周病に携わる関係者が連携し,継続した教育支援体制を整える必要がある.

原著
  • 青木 美智子, 高橋 良幸, 黒田 久美子, 正木 治恵
    2019 年 23 巻 1 号 p. 115-127
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/10/18
    ジャーナル フリー

    本研究は,実践能力の高い看護師が援助を効果的に行うための,自律神経障害を有する糖尿病患者が自分らしく生きるプロセスを支える外来看護援助ガイド(以下,ガイド)の作成を目的とした.自律神経障害のある糖尿病患者への看護援助と結果が詳細に記された先行研究を分析し,ガイド案を作成した.3名の対象患者に適用し,修正したガイドを専門家会議にかけ,有用性と修正意見を求め精錬した.

    ガイドは,ガイドの説明と適用方法,援助指針〔症状マネジメントを支援する〕〔安全安楽な生活調整を支援する〕〔ゆとりある生を支援する〕を柱とする援助計画(看護目標・援助指針・患者到達目標・援助方法)で構成した.ガイドを適用した結果,辛い症状の軽減,安全な生活の確保と豊かな自己形成に繋がる効果を認めた.

    ガイドは,身体・生活・心理社会的側面を包括的かつ関連性を捉えながら,多様なニーズを持つ対象の状況に合う援助を導くことが示唆された.

資料
  • 小林 真央, 利 緑, 安藤 秀明
    2019 年 23 巻 1 号 p. 128-134
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/10/18
    ジャーナル フリー

    看護師のCDEJの認定資格取得の阻害と促進に関連する要因を明らかにするため,5名の看護師へ半構造化面接にもとづくインタビューを行い,KJ法を用いた質的帰納的研究を行った.結果,CDEJの認定資格取得に関連する要因として上位グループ4つ(認定資格の取得を阻害する【取得後の懸念】,【取得前の外的環境要因による懸念】,【取得前の内的要因による懸念】,認定資格の【取得の促進要因】)と13の下位グループが抽出された.【取得前の内的要因による懸念】としてCDEJの認定資格取得にメリットや意義を感じないことで動機が減ずる一方で,【取得の促進要因】としてCDEJの認定資格の取得への動機につながるものがあった.既資格取得者がロールモデルとしての役割を果たすことで資格取得の意味が理解されると考えられ,資格取得の阻害要因を緩和するためには資格取得を目指す看護師への組織的な関わりと既資格取得者の介入による配慮や負担軽減の必要性が示唆された.

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