2019 年 26 巻 p. 3-20
近年、美術館・博物館をはじめとする人文学系分野では、データ用いた研究や活用の取組みが国際的に活発化している。その一つに、欧米や中国の大都市圏ではアートを高付加価値・成長産業の一つに位置付けて美術市場に関する統計データや作品流通に関わる情報整備が進められている。本稿では、データ整備や公開が発展途上にあるわが国の美術分野に着目し、二種類の書籍から抽出した5434件の洋画家情報と美術市場のデータセットを用いて基礎的な分析をすることで、データ研究・活用の観点からデータ基盤整備の必要性を述べる。特に、人物情報のデータ基盤整備に関して、最近の美術分野におけるデータ利用と関連し、これからの美術館・博物館ドキュメンテーションの可能性を論じる。