アート・ドキュメンテーション研究
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最新号
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
研究論文
  • 石井 淳
    2024 年32 巻 p. 3-19
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2025/06/24
    ジャーナル フリー

     現代社会における展覧会を一つの巨大で複合的なメディアと捉え、受容する一般市民の視点から有用な情報モデルと可能な情報資源組織化のあり方を考究している。

     今回、展覧会に関わり生産・流通・受容される幅広い情報を対象に、既存の共通語彙/オントロジーに依拠した構造化記述を試行した。記述項目は本誌前号で提示した情報モデルに準拠し、共通語彙/オントロジーには博物館情報を対象とするCIDOC CRMを採用した。CIDOC CRMは抽象度の高い語彙であるため、本ケースでは適用に際し様々な点で意味解釈の「補強」を要する。本研究ではそれらを図解形式で統合的に整理し、補助参照モデルと位置付けた。

     以上の前提で、展覧会を契機として流通する様々な情報を、相当程度包括的に構造化記述できることが確かめられた。加えて、CIDOC CRM自体が示唆するオブジェクト指向での語彙の拡張により、記述の包摂力を高められ精緻化できることも確かめられた。

研究ノート
  • ─オンラインデジタルアーカイブズを利用した展覧会リスト作成とカタログ収集─
    堀 咲子
    2024 年32 巻 p. 21-37
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2025/06/24
    ジャーナル フリー

     本稿は、ユダヤ人の美術商フェリックス・ティコティンのオランダ滞在期間(1933~1960年)における、かれの日本コレクションが展示された展覧会の記録を調査し、オランダにおけるティコティンの活動とその功績を確認するものである。先ずオランダのデジタルアーカイブズを精査してティコティン日本コレクションが展示された展覧会のリストを作成し、次にリストに従って各々の展覧会カタログを可能な限り確認した。その結果、オランダで展示されたティコティン日本コレクションは、欧州またはオランダで初めて紹介されたもの、あるいは当該テーマにおいて初の大規模な展示の割合が多く、オランダにおける日本美術受容を先導していたことが明らかとなった。

事例報告
  • 橋本 久美子
    2024 年32 巻 p. 39-53
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2025/06/24
    ジャーナル フリー

     東京藝術大学音楽学部では、平成27(2015)年より前身の東京音楽学校における「学徒出陣」の体系的調査を行い、戦没学生の作品を演奏する演奏会を開催し、手稿譜や収録音源をデジタルアーカイブとして構築してきた。本報告は、一連の活動を検証し、戦没学生の楽譜や音源を後世に伝えることの意義と妥当性、課題を明らかにすることを目的とする。

  • ──ヤマガタとシーロンの交歓
    石原 香絵
    2024 年32 巻 p. 55-64
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2025/06/24
    ジャーナル フリー

     1989年から隔年開催されている山形国際ドキュメンタリー映画祭には、過去の応募作品や上映作品を収集・保存・活用する「山形ドキュメンタリーフィルムライブラリー(YDFライブラリー)」が併設されている。2023年度よりYDFライブラリーの概要調査を担うことになった筆者は、それに先だち、同ライブラリーと姉妹関係にある「インド北東部視聴覚アーカイブ(NEIAVアーカイブ)」を視察する機会を得た。経済成長著しいインドにおいて北東部の文化的アイデンティティを守るべく始動したNEIAVアーカイブと、映画フィルムが主流メディアだった1990年代に設立されたYDFライブラリー──それぞれの地域で重要な役割を担う新旧機関の交流には深い意義がある。

  • 大坪 逸貴, 大橋 正司, 飯塚 重善
    2024 年32 巻 p. 65-70
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2025/06/24
    ジャーナル フリー

     昨今の図書館新設の動向として、複合施設化に伴う情報環境の変化がある。従来図書館が所蔵してきた物理的な資料に加えて、デジタルアーカイブを含めたデジタルの情報を提供することを要件とする事例が見られるようになった。筆者らは、とりわけ市民参加型の地域アーカイブの分野において、優れたUXを実現するデジタルアーカイブの設計にあたり要件定義に有用な情報の導出を目指して、人間中心設計における参加型デザインの手法を取り入れたワークショップを実施した。その結果得たデータを分析したところ、デジタルアーカイブを構成要素としたコミュニティの文化継承のしくみをデザインする必要性を確認した。

  • Omeka Sを用いた事例
    笹倉 いる美, 大坪 逸貴, 大橋 正司, 鈴木 將譲, 伊藤 裕美, 小西 智恵
    2024 年32 巻 p. 71-76
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2025/06/24
    ジャーナル フリー

     北海道立北方民族博物館では開館以来収蔵資料データベースを市販データベースソフトを用いて構築し、業務に用いてきた。新型コロナウイルスの感染が拡大するなかで、博物館に来館せずとも博物館を利用できる機会を増やすことを模索し、懸案であった収蔵資料情報をインターネット上に公開することに着手することとした。

     博物館収蔵資料の公開について調査をすすめるなかで、画像をIIIFとすることが必須であると考えるようになり、これをおこなえるデジタルアーカイブ専用のコンテンツ・マネジメント・システムであるOmeka Sを採用することとした。

     本事例報告では、Omeka Sを用いた博物館収蔵資料データベース構築の事例を紹介する。

参加報告記
2023年度アート・ドキュメンテーション学会 第34回年次大会
2023年度アート・ドキュメンテーション学会 第16回秋季研究集会
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