2025 年 33 巻 p. 35-39
田名網敬一は、絵画、映像、グラフィックデザインなど、多領域にて創作活動を続け、国際的に高い評価を受けている美術作家である。2024年、国立新美術館にて大規模回顧展「田名網敬一 記憶の冒険」が開催された。本展覧会は、田名網の多様な創作活動を「記憶」というテーマで体系化した初の回顧展となった。そのなかでも、シルクスクリーン印刷による《ORDER・MADE》シリーズは、印刷技法を用いた表現の原点となる作品である。本稿では、そのシリーズについて作家への聴き取り調査と関連する資料を紹介する。作家の主観的な経験や感情に基づく「記憶」と資料の客観的な事象である「記録」を集め、多面的な視点から作家の創作活動を捉え直す。