発達支援学研究
Online ISSN : 2435-7626
2 巻, 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 2016年から2020年までの論文タイトルの概観から
    神谷 哲司
    2021 年2 巻1 号 p. 2-17
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー
    本稿では、「発達支援とは誰を支援することか」という問いを立て、2016 年から2020 年までに刊行された学術論文のうち「発達支援」というキーワードで抽出された論文タイトルを対象に、そのタイトルがどのような語句によって構成されているかを概観し、さらにそこに含まれている「人物」がどのような人たちなのかを検討することを目的とした。2021 年6 月1 日に「CiNii Articles」によって検索された結果、1993 年以降1,321 編の「発達支援」をタイトルに含む論文があることが明らかとなった。これらの論文数の推移ならびに2016 年から2020 年までの429 編のタイトルの抽出・分類の結果、公的に「発達支援」「児童発達支援」が、発達障害者支援法の制定や2012 年の児童福祉法改正によって、政府の法律用語として用いられるようになる中で、「発達障害者」や「特別支援教育」を中心とした文脈の中で論文数が増加してきたことがうかがえた。一方、人物カテゴリの検討からは、「発達障害者」以外の障害種や高齢者、患者など、あるいは、支援者である看護職に対する「キャリア発達支援」に関する論文も散見された。日常的文脈における支援が、日常的支援者と非日常的支援者という支援者自身の「(キャリア)発達」をも包含することからも、支援―被支援という一方向でない支援対象の枠組みが必要であることが指摘された。
  • 澤江 幸則
    2021 年2 巻1 号 p. 18-30
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー
    本稿は運動発達支援に関する現状と課題について論述したものである。すなわち、我が国には身体的不器用さを含めた運動問題を抱える子どもが少なくなく存在することが明らかになる一方で、必ずしも運動発達に関する先導的な理論的フレームワークに見合った支援が行われているとは限らない。そのような現状を運動の自己組織化理論を通して概説す るとともに、個人と環境、課題の三要素からなるエコロジカル・モデルをもとに、運動発達に関するアセスメントや支援方法について概観した。また本稿において、ここでは十分に議論ができなかった運動に関する発達課題や、運動発達に関するアセスメント、支援方法についての科学的議論が、この発達支援研究をプラットフォームにして、活性化することが求められることを主唱した。
  • 子どもたちのWell-Being を育むために
    相澤 雅文
    2021 年2 巻1 号 p. 31-40
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー
    本研究では、公立小学校2 校(全17 学級、児童数393 名)、公立中学校1 校(各学年3学級、生徒数241 名)の児童生徒に「あなたの楽しみ・安心についてのアンケート」を実施した。小学校下学年(小学校1 年~3 年)、小学校上学年(小学校4 年~6 年)、中学生と3 年毎の学年グループに分類し比較検討を行った。児童生徒にとって楽しいと感じる場所は、半数近くが「家庭」であり、学校は3 割程度であった。家庭で楽しいことは「ゲーム・ネット」であり、学校では「友だちと遊ぶ・話す」ことであった。家庭と学校で児童生徒に影響を与える事物が明確に異なっており、役割も分化されていると捉えられた。Well-Being を育むためには、ポジティブな情動経験を特に学校という場でどのように保障していくのかが大切と考えられた。
  • 本郷 一夫, 平川 久美子, 高橋 千枝, 飯島 典子
    2021 年2 巻1 号 p. 41-58
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー
    本研究は、幼児期における情動発達と行動特徴との関連を明らかにすることを目的とした。保育所、認定こども園のクラス担任は、幼児の情動発達(20 項目)と行動特徴(17 項目)について評定するように求められた。対象児は、4~6 歳の幼児1068 名であった。その結果、①行動統制の困難さ傾向が高い群では、〈抑制〉得点が低く、〈表情による表現〉得点と〈言葉による表現〉得点が高かった。また、②コミュニケーションの困難さ傾向が高い群では、〈理解〉得点、〈表情による表現〉得点、〈言葉による表現〉得点、〈共感〉得点が低かった。しかし、行動統制の困難さ傾向が高い子どもとコミュニケーションの困難さ傾向が低い子どもとでは、情動表出のメカニズムは異なっていると考えられた。すなわち、行動統制の困難さ傾向が高い子どもにおける情動表出の多さは〈抑制〉の困難さに基づくものであり、コミュニケーションの困難さ傾向が低い子どもの情動表出の多さは、〈理解〉や〈共感〉の高さと関連していると考えられた。今後の研究においては、情動、認知、言語、気質などの要因を同時に考慮した研究が重要となると考えられた。
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