2023 年 2 巻 p. 1-9
2000年代に入って以降、日本の大学教育において学生の教育に学生自身が関わることの重要性が提起され、大学院生だけでなく学部学生の上級生が下級生を支援する体制の充実が図られてきた。本研究では、これまで教員の「補助者」として授業に関わることが多かったSA(Student Assistant)が「指導者」として授業に関わることで、どのようにしてその役割を果たし、成長していくのかを描き出す。本研究では、実際に全14回の授業に指導者として関わった20名のSAにインタビュー調査を行い、そのデータを質的統合法(KJ法)によって分析した。その結果、学生が成長・挑戦意欲を持ってSAになり、事前研修、個別の準備、授業実践上の試行錯誤、授業後ミーティングを通じて、他のSAや教員と連携しながら、経験実感や成長実感を獲得し、自身の学習態度の変容にまで結び付けていることが明らかになった。今後は、指導者としてのSAの存在が受講生や教員に対してどのような影響を与えているかを検討していきたい。