わが国の大学は、全学的な教学マネジメントの取組が求められている。その実行にあたっては、学長をはじめとする役職者のみならず、現場の担当者レベルの行動や能力が重要であるが、その人物的特徴は明らかにされていない。そこで、本研究では、「教学マネジメントを推進するアクターにどのような役割・知識・経験が求められているのか」という問いを設定し、20校の国公私立大学の推進アクターを対象に行ったインタビューの発言内容を分析した。分析を経て得られた主な示唆は次の二点である。(1)推進アクターには、利害関係者間を調整するコーディネートや教学マネジメントに関する理解浸透を図るキュレーションの役割が求められる。(2)教学マネジメントに関する知識だけでなく、論理的思考力やリーダーシップなど多様なスキルや態度・志向性が求められ、それらを醸成するにあたり、学内のみならず学外で様々な経験を積むことが重要である。
芝浦工業大学・教育イノベーション推進センターは、2016年に「理工学教育共同利用拠点」として認定され、理工学教育に関わる教員に必要な能力開発プログラムを3つの領域(教育能力、研究能力、マネジメント能力)で構築・実施してきた。この拠点では、2010年度から順次、開発・実施した新任教員向けの4つのプログラムを核にして、年間30程度のプログラムを実施し、年間300名程度の参加者を集めている。2020年度以降は、多くのプログラムがオンラインで実施するプログラムに移行し、2024年度からは第3期の拠点認定に至っている。この報告では、拠点認定以前に実施したプログラムの意義と実施状況、2023年度までに構築・実施したプログラムの全容と実施状況、参加者数の推移と多くのプログラムに参加された方々からの反応から見る成果、理工学教育に資する拠点と表明している理由と今後の課題について報告する。
本研究は、徳島大学と高知大学が連携して共同開発したオンラインのFDプログラム「授業について考えるランチセミナー(以下、本セミナー)」について、2021年度~2023年度の参加者動向、参加者アンケート及び2022年度の参加者を対象に実施したフォローアップアンケートの結果を分析することで、成果と課題を明らかにするものである。本セミナーは、気軽に参加できることを特徴の1つとし、そのうえで、参加者が新たな気づきを得たり、授業や教育活動の中で活用できるように、事例や具体例を中心に紹介し、参加者の意見を取り入れながら実施している。本研究では、大学間で連携することにより、テーマの幅が広がり、参加者の増加につながったこと、テーマへの関心が高い参加者、複数回参加している参加者ほど、セミナー参加後に教育活動において意識や行動の変化があることが分かった。
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