抄録
大地震時に大規模造成宅地の谷埋め盛土地盤が基礎地盤の破壊による被害を受けることが懸念されている.しかし,実際の谷埋め盛土地盤において地震時応答を計測し,切土地盤との地震応答の差異を検討した事例は極めて少ない.地震時の谷埋め盛土地盤の安定性を評価するためには,基礎的なデータの蓄積が望まれている.そこで著者らは,実際の大規模造成宅地内の谷埋め盛土斜面およびその周辺の切土部に,地震計4台,雨量計,地下水位計(間隙水圧計),土壌水分計等を設置して原位置アレー地震観測を行い,観測データを蓄積した.本論文では,これら実際の観測記録に基づき,谷埋め盛土地盤と切土地盤における地震応答の差,および,谷埋め盛土内の水分が地震応答に及ぼす影響について考察を行った.