抄録
2009 年駿河湾の地震における御前崎市付近を対象として,瓦屋根被害(以下,瓦被害)から地震動強さ分布の推定を行った.まず,瓦被害を航空写真により判別し,瓦被害率分布を作成した.瓦被害は航空写真から明確な判別が可能であった.次に,強震観測点周りの被害調査結果から,瓦被害と相関をもつ地震動強さ指標について検討し,瓦被害は,計測震度と高い相関をもつことがわかった.そこで,計測震度を説明変数とする瓦被害の被害関数を作成し,その逆関数を用いて計測震度分布を推定した.その結果,数百m 離れるだけで計測震度が1 程度異なるところもあり,地震動強さは,地形や微地形分類から推定された一次元表層地盤特性だけでは説明できないほど局所的に大きく変化していることがわかった.以上のことから,航空写真により瓦被害を判定して,数百m メッシュという精度で計測震度分布を推定できることがわかったが,充分な数の瓦屋根建物がなければならないこと,瓦被害のない建物については,瓦屋根建物とそうでない建物の判別が航空写真では難しいなど,いくつか課題も浮き彫りになった.