2013 年 13 巻 5 号 p. 5_44-5_61
誰もが参加し利活用できるフラットな観測システムの試みとして、人が居住している建物数万箇所の地震応答情報をアーカイブできるようなセンサーネットワークを、近年急速に発展しているクラウド環境を利用して構築した。このシステムではセンサーを設置して通信を確立させればあとはクラウド上に自動的にセンサー情報や地震記録がアップロードされるため、ユーザーはインターネットに接続した端末のブラウザを通してセンサー設置位置や観測波形などを見たり波形をダウンロードしたりすることができる。また、管理者側としてはサーバーの構築や維持をする必要がないなど運用面でも利便性が高い。今回は汎用強震計や、携帯情報端末に内蔵されたMEMS 加速度センサーを使用して観測した例を紹介する。現在我々はこのシステムを藤沢市内と長岡市内で一般家庭などを対象に設置して実証実験を行っている。一般家庭の生活空間内にこのようなセンサーを設置する際には通常の観測よりもかなり制限や困難を伴う場合があることも示しつつ、センサークラウドシステムの今後の展望について考察する。