2017 年 17 巻 2 号 p. 2_158-2_173
東日本大震災の津波による人的被害の発生率を地域単位で比較した場合, その大小には地域固有の自然特性と社会特性が関係しているはずであり, その関係を数値モデル化できれば, 人的被害の要因について理解が進み, 対策の効果を定量的に評価できる.そこで著者等は, 津波による人的被害の発生率を建物被害の発生率で割ることによりその地域の津波からの避難の脆弱性を表す指数, HVI(Human Vulnerability Index)を導入し, 既往の調査データを使って岩手県・宮城県・福島県沿岸の主要自治体のHVIを求めた.そして, 各自治体の避難にかかわる自然特性と社会特性を, 津波到達時間と避難距離, 避難道路の整備状況, 住民の日頃の備え, 住民への危機情報の伝達, の4項目で数値化し, HVIとの関係を重回帰分析した.その結果, 有意な回帰式が得られ, 津波からの避難に及ぼす各項目の影響を定量的に評価できた.今後は, 回帰式を他の津波災害事例にも適用して汎用化すると共に, 自然特性と社会特性の数値モデルの一般化を図ることによって, 被災の可能性がある自治体の津波避難の脆弱性と対策を事前評価できるようにすることが課題である.