日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
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報告
長周期・長時間地震動や活断層近傍の強震動など極大地震動を考慮した都心に建つ既存高層建築の制振補強に関する研究
中西 真子久田 嘉章山下 哲郎笠井 和彦
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2018 年 18 巻 2 号 p. 2_62-2_81

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抄録

近年,超高層建築などの重要建築物には,発生確率の高いL1,L2地震動に対しては,それぞれ機能継続性と修復性を可能とする従来より高い耐震性能に加え,海溝型超巨大地震や活断層など数千年に1度程度の極めて低い確率であるL3地震動(極大地震動)に対しても倒壊しない,など余裕度を見込んだ検討が求められている.最近では長周期・長時間地震動に対する制振ダンパーによる補強事例が増えているが,首都直下地震や活断層帯の地震等による震源近傍強震動までも有効性を検証した事例は無い.そこで本研究では,工学院大学新宿校舎(1989年施工,28階建てS造)をケーススタディとし,長周期・長時間地震動や活断層近傍強震動など極大地震動を考慮した様々なタイプとレベルを持つ地震動に対し,ダンパー補強による耐震性能の評価を行った.ダンパーの配置法として,3次元立体フレームモデルにプッシュオーバー解析を行い,その変形量を参考にする簡便的な方法を用い,ダンパー総数44本という比較的少ない本数で様々な地震動に対し,断層のごく近傍の長周期パルスが卓越する特殊な地震動を除き十分な補強効果が得られることを確認した.

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© 2018 公益社団法人 日本地震工学会
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