日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
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論文
プレート境界巨大地震を対象とした室内実験結果を踏まえた動力学的断層破壊シミュレーション
津田 健一宮腰 淳一今任 嘉幸杉山 大祐坪井 誠司
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2019 年 19 巻 4 号 p. 4_1-4_12

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抄録

本研究では,2011年東北地方太平洋沖地震の様なプレート境界巨大地震で見られた,特徴的な震源特性の発生メカニズムを理解することを目的として,三次元スペクトル要素法(Gelvez et al., 2014)を用いた動力学的断層破壊シミュレーションを行った.著者らはこれまで強震動予測で広く用いられている特性化震源モデルを用いて東北地方太平洋沖地震の震源特性の検討を行ってきた(Tsuda et al., 2017).このTsuda et al. (2017)が作成したモデルに対して,本研究では,宮城県沖のプレート境界で採取された試料を用いた室内実験結果に基づく断層浅部での摩擦特性を反映して改良した初期条件を設定した.今回のシミュレーションで設定した臨界すべり量(DC)は,既往研究で推定されている値に対して非常に長い値であったが,シミュレーション結果によるすべりやすべり速度関数の形状は,東北地方太平洋沖地震の破壊特性を再現するものであった.本研究で設定した長い値のDcは,破壊伝播が遅い浅部の軟らかい層の特性を反映している可能性も考えられる.今後はより詳細な摩擦パラメータや地下構造の不均質性を考慮することによって,南海トラフの巨大地震といったプレート境界巨大地震の特徴的な震源特性の発生メカニズムの把握だけでなく,地震動の予測とそれに伴う地震被害の推定に資する検討につながると考えられる.

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© 2019 公益社団法人 日本地震工学会
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