日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
19 巻 , 4 号
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論文
  • 津田 健一, 宮腰 淳一, 今任 嘉幸, 杉山 大祐, 坪井 誠司
    2019 年 19 巻 4 号 p. 4_1-4_12
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/30
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    本研究では,2011年東北地方太平洋沖地震の様なプレート境界巨大地震で見られた,特徴的な震源特性の発生メカニズムを理解することを目的として,三次元スペクトル要素法(Gelvez et al., 2014)を用いた動力学的断層破壊シミュレーションを行った.著者らはこれまで強震動予測で広く用いられている特性化震源モデルを用いて東北地方太平洋沖地震の震源特性の検討を行ってきた(Tsuda et al., 2017).このTsuda et al. (2017)が作成したモデルに対して,本研究では,宮城県沖のプレート境界で採取された試料を用いた室内実験結果に基づく断層浅部での摩擦特性を反映して改良した初期条件を設定した.今回のシミュレーションで設定した臨界すべり量(DC)は,既往研究で推定されている値に対して非常に長い値であったが,シミュレーション結果によるすべりやすべり速度関数の形状は,東北地方太平洋沖地震の破壊特性を再現するものであった.本研究で設定した長い値のDcは,破壊伝播が遅い浅部の軟らかい層の特性を反映している可能性も考えられる.今後はより詳細な摩擦パラメータや地下構造の不均質性を考慮することによって,南海トラフの巨大地震といったプレート境界巨大地震の特徴的な震源特性の発生メカニズムの把握だけでなく,地震動の予測とそれに伴う地震被害の推定に資する検討につながると考えられる.

  • 須藤 巧哉, 山崎 文雄, 松岡 昌志, 井ノ口 宗成, 堀江 啓, 劉 ウェン
    2019 年 19 巻 4 号 p. 4_13-4_31
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/30
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,2016年熊本地震における熊本県益城町の家屋被害認定調査結果に基づいて建物被害分析を行うとともに,推定地震動分布と組み合わせて建物被害関数を構築した.建物被害分析では構造別,建築年代別,木造建物の屋根形式別・階数別に被害を分析した.その結果,木造建物の全壊率は,RC造,S造,LS造と比較して全体的に大きく,建築年代が古くなるほど大きくなる傾向が顕著にみられた.また,最大地表速度および計測震度に対する,構造別,木造の建築年代別の益城町の建物被害関数を構築した.益城町の被害関数は,1995年兵庫県南部地震の結果に基づく経験式と比べて,同一の最大地表速度における全壊率が低くなる傾向がみられた.

  • 元木 健太郎, 古家 萌子, 加藤 研一, 渡辺 哲史
    2019 年 19 巻 4 号 p. 4_32-4_51
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/30
    ジャーナル 認証あり

    ノイズが多い場所における連続観測記録から精度よく地震動を抽出する方法と,抽出した記録を地震カタログと関連付ける簡便な方法を提案した.東京都心近くに設置した4点を対象として,微動の振幅レベルが小さくなる0.5~2Hzのフーリエ振幅に基づき地震動を抽出した.一般的に用いられるSTA/LTAによる方法と比べ,本手法の結果は正解率,検出率ともに高いことを示した.本手法はM3クラス以下の地震に対しては抽出困難であるが,東京都心においても約半年間の地震観測記録から海外で発生した地震も含めて120地震を抽出することが出来た.

  • 吉田 邦一, 宮腰 研
    2019 年 19 巻 4 号 p. 4_52-4_70
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/30
    ジャーナル 認証あり

    S波部分上下動を対象としたはぎ取り解析では,P波鉛直入射あるいはS波斜め入射を仮定して,一次元成層構造を用いた表層地盤の地震動応答が計算される.本論文では,モデル計算によりP波鉛直入射あるいはS波斜め入射により求められる上下動の地震動の差異を示し,さらに実観測記録を対象に地震動の再現と,はぎ取り解析を試みた.まず,地表と堆積層中の地中に地震観測点がある鉛直アレーを対象に,地中地震計より浅部の構造が同じで,深部の構造が異なる地震波速度構造モデルについて,地表/地中スペクトル比をP波鉛直入射あるいはS波斜め入射それぞれについて計算した.その結果,地震基盤と堆積層のコントラストの大きな速度構造モデルではスペクトル比の差が小さかったものの,深さとともに徐々に速度が変化するような速度構造モデルでは大きく異なっていた.この結果は,深部の地下構造によっては,上下動はS波斜め入射に基づき計算する必要がある場合があることを示している.さらに,実際の観測点(KiK-net SRCH08砂川)で得られている地殻内地震のS波部分の上下動でも,P波鉛直入射よりもS波斜め入射にもとづく理論地表/地中スペクトル比の方が観測スペクトル比を良好に説明し,はぎ取り解析結果も良好な結果を得た.

  • 今田 拓実, 山岸 邦彰
    2019 年 19 巻 4 号 p. 4_71-4_86
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/30
    ジャーナル 認証あり

    物流量拡大により倉庫建築物の需要が増加している一方,物流コストの抑制と地震時の荷物の保全要請を背景として,倉庫建築物の建築コスト削減と耐震性能の向上に対する要求が高まっている.これらの要求に対して,地震時における積載物の滑動によって建築物や積載物の地震応答が低減する効果(以下,Slide効果と呼ぶ)は,一般的な設計では考慮されていないが,その考慮は制震効果に類似する合理的な設計に資する可能性がある.しかし,既往の研究では基礎を固定した条件下における実験および解析により,Slide効果が確認されているが,地盤と建築物との相互作用を考慮した場合の同効果については未解明である.そこで,本研究では試設計された大規模な3階建ての倉庫建築物を模擬した修正Penzien型モデルによる地震応答解析を実施して,自由地盤の応答と相互作用を考慮した場合のSlide効果について定量的に把握した.さらに,付加等価減衰定数を算出して,Slide効果を減衰定数に換算して評価した.これらの結果,相互作用を考慮しても基礎固定時と同等のSlide効果を期待できること,一般的な倉庫建築物であれば約6~9%程度の付加等価減衰定数を有していることを確認した.

  • 中島 由貴, 中村 孝明
    2019 年 19 巻 4 号 p. 4_87-4_99
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/30
    ジャーナル 認証あり

    空港に課せられる地震時の要求性能は,民航機の運行維持のみならず,災害時には支援物資や人命救助の拠点としての役割が求められる.これら性能が達成されているか否かを照査するため,空港総体としての機能の信頼性評価が求められている.一方で,人工島方式を含め臨海部に位置する空港が多くを占める我が国では,震動や液状化に伴う施設被害に津波被害を加えた複合被害による空港機能の信頼性評価が必要となる.本論は複合被害を考慮した空港機能の信頼性を評価する方法を提案する.九州地方の臨海部空港を例として取上げ,当該空港に最大の被害を与えるであろう直下型の地震,ならびに南海トラフで発生する巨大地震について,複合被害を考慮した健全度曲線を評価する.提案手法の適用性や課題を整理する.

  • ―観測サイトの基盤特性と伝播経路特性を考慮した震源スペクトルの推定―
    小林 源裕, 儘田 豊
    2019 年 19 巻 4 号 p. 4_100-4_121
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/30
    ジャーナル 認証あり

    震源スペクトルの高周波数帯域におけるスペクトル特性を詳細に把握するため,硬質岩盤サイトの鳥取県西伯郡(花崗岩地域)の1000m鉛直アレー観測点において,2016年鳥取県中部の地震の前震(Mj4.2),本震(Mj6.6)及び最大余震(Mj5.0)の3地震,並びに2000年鳥取県西部地震の余震(Mj2.5~3.0)の4地震の合計7地震を対象に,それぞれ深度100m(S波速度2.6km/s),深度300m(S波速度2.8km/s)及び深度1000m(S波速度3.2km/s)の地震基盤相当における70Hz高周波数帯域までの基盤スペクトルを評価し,これらに基づき各震源スペクトル(加速度震源スペクトル)を推定した.従来からの手法に基づき,各深度の基盤スペクトルから観測サイトの伝播経路特性を考慮することにより得られる震源スペクトルは,それぞれコーナー周波数fc以上の高周波数帯域で低減傾向を呈して基盤深度ごとに異なるスペクトル形状を有し,一義的に震源スペクトルを推定することは難しい.一方,伝播経路特性に加えて小林・儘田(2018)による「基盤特性」,すなわち観測サイトのS波速度3.6km/s相当層のいわゆる上部地殻から基盤層(地震基盤)にかけての深い基盤における地震動の伝達特性を考慮することにより得られる震源スペクトルは,それぞれコーナー周波数fc以上の高周波数帯域で平坦な特性を呈して基盤深度ごとのスペクトル形状の違いはなく,震源スペクトルを安定的に推定可能である.観測サイトの基盤特性と伝播経路特性を適切に考慮することにより推定される震源スペクトルは,観測精度が保証されている70Hz高周波数帯域まで地震のω-2則がおおむね成り立つことを示している.

報告
  • ―認識論的不確実さ要因の一つとして―
    内田 淳一, 岩渕 洋子, 杉野 英治
    2019 年 19 巻 4 号 p. 4_122-4_155
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/30
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    日本海東縁部の広域的な地殻構造境界に関する既往知見を整理し,当該地域の津波想定に係る認識論的不確実さを評価するためのロジックツリーの設定において,地殻構造境界の項目を最初の分岐に設け,その中で破壊領域,地震規模及び連動性に関する不確実さを考慮することを提案した.また,これらの不確実さを考慮するために必要な具体的なモデルの一つとして,地殻構造境界型の津波波源モデルを提示した.この地殻構造境界型の津波波源モデルは,新生プレート境界論及びひずみ集中帯に関する既往知見並びに最近の地殻構造境界に関する知見を整理した結果を踏まえ,地殻構造探査により東傾斜の逆断層が連続的に確認された範囲を基本として設定した既往最大規模を超える津波波源モデルである.想定される地震規模はMw7.7~8.6であり,国土交通省(2014)の地殻内地震型の津波波源モデルの地震規模(Mw7.5~7.9)を上回るものであった.さらに,日本海沿岸地域における津波水位への影響を確認するため,地殻構造境界型の津波波源モデルと地殻内地震型の津波波源モデルを用いた津波伝播解析を行い,両者の津波水位を比較した.その結果,地殻構造境界型の津波波源モデルを用いた津波水位は,地殻内地震型のそれよりもおよそ2~3倍高くなることを示した.さらに,最大水位に見られる地域差は,地殻内地震型よりも地殻構造境界型の津波波源モデルの方がより強調されることが明らかになった.

  • 山田 伸之, 竹中 博士
    2019 年 19 巻 4 号 p. 4_156-4_169
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/30
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    本報告では,沖縄諸島島嶼部におけるS波速度3km/s相当の地震基盤上面までの深部地盤モデルに関する情報提供に資するために,微動アレイ観測データを用いた解析を適用し,各地点で1~3層と地震基盤の1次元S波速度構造を推定した結果について記す.その結果,地震基盤上面までの深さは,沖縄島北部や西部,久米島などで0.2~0.4km,沖縄島南部で2.0~2.5kmとなった.また,速度構造の3次元数値モデル作成を視野に入れ,全地点の推定結果から,4層モデルとした場合の各層のS波速度の平均値(0.69, 1.10, 2.01, 3.46km/s)と層境界深度も提示した.このS波速度の平均値は,宮古・八重山諸島の結果と近い値となり,両諸島を含む広域の速度構造モデルの実現への方向性を示すこともできた.こうした島嶼部の深部地盤のS波速度構造の情報は,速度構造モデルの改良や地震動評価の精度向上に寄与するものと考えられる.

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