地表断層変位は近傍の構造物に大きな影響を与える可能性があるため,原子力発電所のような重要構造物の安全性確保には,一定の信頼性のある断層変位評価が求められている.断層・地盤には多くの不確実性が存在するため,断層変位評価には種々の不確実性の考慮が必須である.本論文では,ラテン超方格法を用いて,岩盤及び断層面の物性値の不確実性を考慮した全230回の3次元断層変位解析を実施し,物性値の不確実性が断層変位評価の応答値に与える影響を整理した.また,サンプル数を変えた多数回計算によりサンプル数に対する確率応答の収束性を確認した.その結果,地表に断層変位が出現する時の主断層底部の限界入力ずれ変位は,物性値の不確実性の影響を大きく受けることが分かった.また,物性値が対数正規分布に従う場合,限界入力ずれ変位の確率分布は対数正規分布でよく近似できることが分かった.この時,物性値の変動係数が0.3以下の条件では,限界入力ずれ変位の期待値と標準偏差は10回程度の計算でも全230回の計算結果との誤差を数cm以下で計算可能であった.