日本地震工学会論文集
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論文
本震・余震の時系列地震群を考慮した確率論的地震ハザード解析
―東北地方太平洋沖地震の本震・余震への適用―
儘田 豊藤田 雅俊菅谷 勝則
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2021 年 21 巻 2 号 p. 2_1-2_20

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抄録

2011年東北地方太平洋沖地震(東北地震)を対象として,本震発生から1年間に発生した余震を含めた確率論的地震ハザード解析を行った.東北地震の余震の規模別発生頻度を,検証と将来予測の観点から,2通りの方法でモデル化し,防災科学技術研究所の強震観測網(KiK-net,K-NET)の太平洋沿岸に位置する観測点4地点において地表の最大加速度の年超過頻度を推定した.余震の規模別発生頻度のモデルについては,東北地震の余震カタログ(モデル1)及び東北地震発生前に発生した複数の本震・余震群カタログ(モデル2)を用いて推定した.解析の結果,いずれのモデルについても,1地点を除いた3地点の最大加速度の年超過頻度はほぼ同等であった.また,4地点で推定した最大加速度の年超過頻度を,各地点で観測された地表の強震動記録から読み取った年超過頻度と比較した.その結果,200 cm/s2程度以下の加速度範囲において,両モデルによる推定値と観測記録の最大加速度の年超過頻度は調和的であり,東北地震発生前の観測記録を用いたモデル2でも余震の規模別頻度が推定可能なことが示された.加えて,Iervolino et al. (2004)により提案されている本震・余震の時系列地震群のハザード解析に基づき,モデル2による余震の規模別頻度の予測結果を用いて東北地震の本震及び余震を考慮した最大加速度の年超過頻度を推定した.余震域に近い3地点では建築物等の被害が危惧される加速度範囲を含む300~1500 cm/s2程度において,余震における最大加速度の年超過頻度への寄与は20~30%程度となった.以上を踏まえ,東北地震のような超巨大地震のプレート間地震における余震域から近い地点では,地震動で被害が拡大する可能性があるため,防災及び減災の観点から,余震を対象に被害が生じうる大きな地震動の超過頻度を定量的に把握することの重要性が示唆された.

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