2025 年 25 巻 4 号 p. 4_189-4_195
健康に関する行動変容促進の手法に関しては,理論的体系化およびたばこ対策などの実践の実績がある.健康と防災分野は,互いに,「個人や集団の行動変容をリスク減につなげられる可能性が高い」という共通点があり,従って,健康分野の理論・実践を応用して防災に関する多様な取り組みを検討することは,防災課題の明確化や新たなアプローチの考案などの観点で有益と考えられる.本研究では,地震防災に関し実施されている取り組みをProchaskaの変容ステージモデルに基づく手法論(無関心期,関心期,準備期,実行期,維持期それぞれの対象者の心の状態に合わせた働きかけの方法論)に基づき試行的に検討した.その結果,健康分野に比べ,実行期・維持期の個別支援が薄いことが示唆された.また,地震の警戒・注意情報の浸透や適切な対応能力の獲得に対しても,このような個別支援やそのための人員の必要性が考察された.今後,変容ステージモデルを防災に関する課題へ適用することの有効性の検証や,個人(生物的,心理的)・個人間(社会的,文化的)・組織・コミュニティ・環境・政策といった細かい粒度での整理を進めていくことが有効であると考えられる.