経済地理学年報
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戦後ソ連における地域生産コンプレクス概念の展開と地域開発
小俣 利男
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1992 年 38 巻 2 号 p. 89-110

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抄録

地域生産コンプレクス(TPK)は, ソ連において1970年代初め以降, 地域計画や地域開発政策の中で重要な地位を占めるようになり, TPK形成計画が立案・実施されてきた. 本稿では, ソ連邦が解体された現時点におけるTPK研究の意義を指摘しながら, 前稿を受けて1950年代から1980年代末までのソ連におけるTPK概念の展開を把握するために, 概念そのものの形成・確立過程と概念の実践がもたらした社会経済的な影響が考察されている. その結果, 次の点が明らかになった. 1) TPK概念の確立に先行して, TPKの形成が本格化した. これら形成途上のTPKの特性が, 国内外に普及した概念を規定した. 2) TPKは, 域内の指揮系統が異なる諸要素の関連づけや単一のプログラムに沿った形成・操業により, 各種の節約を目指し, 総合開発と特定部門開発の中間型の開発である. 3) TPK概念の確立と実践は, 部分的な地域別計画・管理の必要性と経済・社会計画の立案・実施における地域指向性を高めた. 4) TPK概念は, その発展過程で社会的インフラの整備や環境保護という側面を拡充してきた. しかし, TPK形成地区では社会的インフラの問題だけでなく, 環境や先住民の生活の悪化もみられ, TPK計画やTPK概念の改善・補強も必要になる. 5) TPKの形成は, 必ずしも順調ではなかったが, 部門的, 地域的に選択的な投資により, 1970年代以降のエネルギー・原料資源の開発とエネルギー多消費型生産の増大を保障し, 国内の生産及び人口の配置に一定の変化をもたらした.

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© 1992 経済地理学会
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