経済地理学年報
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千葉県富里町における自立農業経営の特性 : 金堀集落と太木集落を例として
張 貴民
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1992 年 38 巻 2 号 p. 111-124

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抄録

本稿は, 高度経済成長期以降に成立した自立農業経営に焦点をあて, 千葉県富里町金堀集落と太木集落を例とし, 農業経営の内的条件の比較から, その自立農業経営の実態と存立要因を考察した. 戦時中の緊急開拓により形成された金堀集落では, 農家は大規模圃場の集中所有, 恵まれた農業労働力, 農業後継者の存在などの営農条件をもち, 高度集約的な施設園芸農業が行なわれている. 高い農業所得を獲得し, 家計のほとんどを農業所得に依存している自立農業経営が集団的に成立している. 一方, 約100年間にわたる開拓により形成された太木集落では, 農家は零細で分散した耕地の所有形態, 高齢者や女性を中心とする農業労働力, 農業後継者の不足などの農業経営の内的条件を有している. 労働粗放的な農業経営が行なわれ, 家計の農業所得への依存度は低い. 農家収入の大部分を農外収入に依存している. また, 本来兼業志向の強いこと, 兼業経験のあることが, 最近の兼業化をさらに進めた農家の内的要因として考えられる.

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© 1992 経済地理学会
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