経済地理学年報
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農山村地域における低次中心地の衰退過程 : 島根県川本町を例として
作野 広和
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1995 年 41 巻 3 号 p. 155-170

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抄録

わが国の農山村地域に点在する低次中心地は, 過疎の慢性化とともにその存立基盤を次第に低下させつつある. これは, 従来の低次中心地を中心とした中心地システムが崩壊し, 都市を中心とした新たなシステムヘと再編成された結果といえる. 本研究では, 近年の低次中心地における衰退過程を, 既存の中心地論的方法論から捉えるとともに, その要因を地域労働市場の再編成を通して明らかにする. 事例とする地域は中国山地に位置する島根県邑智郡川本町とし, (1)低次中心地における主要な存立基盤である官公署の機能や規模の変化, (2)中心地機能を担う事業所の機能や管轄領域の変化, (3)地域労働市場の再編成と低次中心地の盛衰との関係の3つの観点から考察した. この結果, 現業部門を中心とした官公署の縮小と官公署職員の単身赴任者増大や居住形態の変化が低次中心地の人口を減少させ, その結果, 低次中心地の機能低下がみられること, 低次中心地に立地する民間事業所の町外への移転や新設に伴い, それらの機能低下がみられたこと, 行政上の中心地よりも高速道路が通過するなど地理的に有利な町村へ県外資本の製造業が立地し, 雇用の面での低次中心地の優越はないこと, などが明らかとなった. 以上のことから, 低次中心地自体の機能低下と域外資本の参入による地域労働市場の再編成の結果, 低次中心地の存立基盤は弱体化し, 衰退していったと考えられる.

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© 1995 経済地理学会
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