経済地理学年報
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輸入かぼちゃ増加傾向下における国内産地の存続 : 茨城県江戸崎町・北海道和寒町を事例として
高柳 長直
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1998 年 44 巻 2 号 p. 135-148

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抄録

かぼちゃは, 近年急速に輸入が増大している野菜である. 本稿は, かぼちや産地を事例として, 国際的な産地間競争が激化していく中で, 国内産地がどのように存続していくのか, その際の課題点について考察を行った. 大都市近郊産地(江戸崎町)では, 夏場に高品質のかぼちやを高価格で販売することによって存続し, 比較的高い所得を獲得してきた. 輸入かぼちやとは品質的に競合せず, 出荷時期もほとんど重ならず, 輸入増加の影響はみられない. むしろ, 担い手の高齢化や流通構造変化への対応のほうがより重要な課題である. 一方, 北海道輸送園芸産地(和寒町)では, 水稲転作作物としてかぼちやが導入され, 不利な立地条件を貯蔵技術の進展によって補い産地が形成されてきた. 和寒産地の場合, 品質的な対抗が難しく価格は低迷している. それに加えて, 出荷経費をはじめとするコストはある程度必要であり, 所得率は低い. 11〜12月は輸入物と競合することになり, 年によって市場価格が低下することによる影響は少なくない. しかしながら, 和寒産地では, 輸入増加の影響をそれほど深刻に受け止めてはいない. かぼちやは, 輪作体系の一つの作目にすぎず, 依然として水稲が農家経営の基幹であるからである.

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© 1998 経済地理学会
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