経済地理学年報
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長野県富士見町における花卉栽培の発展プロセスとその存立基盤
小澤 さやか
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1998 年 44 巻 3 号 p. 224-238

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抄録

本研究では, 高冷地の花卉栽培地域として長野県諏訪郡富士見町を事例に花卉栽培の発展プロセスを明らかにし, 花卉栽培農家における経営形態の時系列的変化の分析と, そのような変化を支える条件を存立基盤として明らかにした. 現在の富士見町では, キク栽培専門農家, キクとカーネーション栽培の複合経営農家, カーネーション栽培専門農家の3タイプの花卉栽培農家が混在している. 3タイプの花卉栽培農家に共通する存立条件は, 先駆者の存在と端境期出荷による経済的な有利性である. これらの共通条件に国庫補助による大型ハウスの建設や米の生産調整など行政の後押しと各農家の意志決定が加わることによって, 同一地域内において経営形態の分化が生じている. また, 富士見町をキクとカーネーションの産地として維持させているのは農業協同組合であり, 花卉の生産から出荷に至る一連の過程に大きく関与している.

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© 1998 経済地理学会
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