経済地理学年報
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食料・農業・農村基本法と中山間地農業再生の可能性(<特集> 日本経済の再生と地域経済構造)
有本 信昭
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1999 年 45 巻 4 号 p. 279-290

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抄録

食料・農業・農村基本法の成立経過を踏まえて, 東海地域の中山間地農業再生の可能性・条件を実態分析のなかから明らかにした.食料・農業・農村に関する国民的合意が未成立なままに, 妥協の産物として形成された食料・農業・農村基本法は, 「玉虫色」の表現を多く持ち, また2つの側面を有している.すなわちこの間の国民的・地域的な運動の反映という側面と, それにもかかわらず趣旨を貫徹しようとする政府(および多国籍資本)の論理・動向である.そこで前者を活用して, 後者を封じ込める国際的・国内的・地域的な, 地域住民主体の食料・農業・農村振興の取り組みが求められている.具体的な東海地域, とりわけ岐阜県の中山間地農業の再生で言えば, 1950年代以降の半世紀近い産地形成の歴史を有する飛騨地域の場合と, こうした先行産地に追随して産地の形成(特に飛騨牛のそれ)を図ってきた郡上郡八幡町のようなフォロワーとでは, その条件が大きく異なっている.こうした差異を踏まえた, 「農業の再生」と「農村(集落)再生」のための地域住民の取り組み, その苦難に満ちるであろう経験のなかからしか「日本経済の再生」は生まれてこないと考える.

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© 1999 経済地理学会
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