経済地理学年報
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グローバル化時代における日本の産業集積 : 近年の研究展望を通じて(<特集> 日本経済の再生と地域経済構造)
小田 宏信
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1999 年 45 巻 4 号 p. 291-306

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抄録

グローバル化時代において, 日本の中小機械工業は, 海外との競争, 受注先企業の生産体制変革の中で, 経営体の選別・淘汰を伴った再編を強いられてきた.ここに日本の製造業を支えてきた基盤的技術集積の崩壊が危惧され, 立地政策も再集積策への転換をはかっている.本報告は近年の研究展望を通じて, とくに機械工業に関わる日本の産業集積の現段階とその研究視点について考察したものである.集積システムの変動を分析することは経済地理学の最重要課題の一つである.その分析にあたっては, 産業組織論を踏まえた動態的な集積・分散論を援用するとともに, 生産工程に対する技術論的な理解に基づく必要がある.さらに, 機械工業集積の現局面を明らかにするためには, ME技術革新期という歴史的契機, および距離や面的広がりといった空間的契機を実態分析に積極的に取り入れ, 立体的な構造解明がなされなければならない.こうした観点からみると, 日本の機械工業集積はME技術革新期・グローバル化期を経て, 基盤的製造加工業者群の立地分散と取引連関の広域化に伴って, 集積地間のネットワークの形成へと自生的にも政策的にも向かいはじめている.今後, 日本の中小企業集積を維持・拡大していくためには狭域的な立地環境の整備, また社会的なコンセンサスづくりが不可欠である.

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© 1999 経済地理学会
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