経済地理学年報
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地域間所得再配分と縁辺地域 : 地方交付税の配分構造と政策過程(<特集> 日本経済の再生と地域経済構造)
梶田 真
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1999 年 45 巻 4 号 p. 333-349

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抄録

わが国では地域間所得再配分政策が重視され, 縁辺地域の町村では財政支出に依存した地域経済が形成されている.本研究では縁辺地域の町村にとって最大の歳入費目である, 地方交付税の配分構造の経年変化を検討し要因分析を行った.まず人口規模1万人未満の町村を対象に地方交付税の配分構造を規定する, 基準財政需要額の費用関数を推定し経年比較を行った.その結果, 固定費用が絶対的にも相対的にも増加しつづけていることが明らかになった.固定費用の増加は主として, 1960年から70年の間は公共投資財源の配分強化と消防, 水道といった公共サービスの普及, 1970年から81年の間は過疎債の新設, 1981年から93年の間は企画振興費と高齢者福祉に関する費目の新設によって説明される.過疎化によって縁辺地域の町村人口が減少し, 町村人口規模の分布構造が変化したことも固定費用増加の一要因である.最後に事例地域として山梨県内市町村を取り上げ, 市町村財政の空間パターン変化と地方交付税との関係を分析した.1960年代以降, 過疎化が進んだ縁辺地域の町村では人口1人あたりの総歳入額が突出するようになる.特に1970年代は総需要拡大政策の影響で, 国庫・県支出金での配分も強化される.1980年代は国家財政危機の中で国庫・県支出金の削減が行われ, 縁辺地域の町村はより大きな影響を受ける.しかし代わりに地方債による歳入額の特化が進み, 総歳入額でみると1980年代においてほとんど空間パターン変化はみられない.

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© 1999 経済地理学会
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