国家の発展には地方及び地域の開発が非常に重要視されており, 政府予算の公共投資のなかでインフラストラクチャーの整備は地域開発の促進に大きな影響を与えている.本稿は1983年以降のフィリピンにおけるマルコス, アキノ, ラモス各政権の公共投資計画及び各地域への予算配分について分析を行ったものである.その結果, いずれの政権も地域間格差の是正を提唱しているものの, 実際の予算配分においては経済効率性を重視したため, 政策と施策の間に乖離がみられた.アキノ政権で制定された1991年地方自治法は, 地方への権限と財源の大幅委譲を通して, 首都圏との格差是正を試みたものであった.しかし, 格差是正を行うために拠点開発方式を採用した結果, 開発拠点となった地方都市と農村部の格差という新たな問題点を引き起こした.また途上国の経済発展には外資が大きな役割を果たすが, 特定地域に対する税制優遇措置も地域間格差の一要因となっている.フィリピンを事例とした本研究は, 国家の経済発展と地域間格差の是正を同時に追求することの困難性と問題点を明らかにした.