経済地理学年報
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横浜市鶴見区における日系人の就業構造とエスニック・ネットワークの展開
島田 由香里
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2000 年 46 巻 3 号 p. 266-280

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抄録

本研究の目的は, 南米出身の日系人のもつエスニック・ネットワークの役割に注目して, 横浜市鶴見区に在住する日系人労働者の流入過程とその就業構造を検討することにある.1990年以降, 当地域では多数の日系人労働者が就業するようになる.その流入経路をみると, まず東海や北関東の工業都市で働き, その後鶴見区にやってくるケースと, はじめから鶴見区を目的地として来日するケースの2つのタイプが確認された.就業状況をみると, 建設・工事関係で日雇いとして働く日系人が多くみられたものの, 製造業, サービス業など, 多様な業種に就いていることも明らかになった.戦前・戦後を通じ, 沖縄から移民した人々が南米に形成した沖縄県出身者のコミュニティと, 仕事や生活の情報を提供する鶴見区の沖縄県出身者のコミュニティが結びつくことによって, 南米と日本を結ぶ広範なエスニック・ネットワークが形成されてきた.鶴見区に日系人が集まる背景には, こうしたネットワークが重要な役割を果たしているのである.

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© 2000 経済地理学会
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