経済地理学年報
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阪神・淡路大震災に伴う神戸ケミカルシューズ産地の変化
山本 俊一郎
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2000 年 46 巻 3 号 p. 281-294

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抄録

阪神・淡路大震災による神戸ケミカルシューズ産地内部の変化を, 主にメーカーを中心とした加工業者・材料屋・問屋との取引連関(生産流通ネットワーク)から考察した.その結果, 震災後における産地の生産流通ネットワークには著しい変化はみられなかったことが明らかとなった.その理由として生産流通ネットワークが業者間の信頼関係により強固に連結していたこと, 被災地域にほとんどの関連業者が集積しており, 操業再開において足並みをそろえる結果につながったこと, また多数のメーカーが問屋依存型であったことがあげられる.言い換えれば, 産地は従来の強固に結ばれた生産流通ネットワークをそのまま再生することによって, 早期再開を目指したといえる.一方, 震災は, ケミカルシューズの高級化を介して, 製靴業界全体に少なくないインパクトを与えた.震災によって海外低価格製品が急激に増加し, 神戸ケミカルシューズ産地はより一層の製品高級化を図らざるを得なくなった.製品の高級化は, 高級革靴産地である東京浅草産地との新たな競合関係を招き, このことによって, これまで製品・種別に階層化されていた製靴業界では, 新たな再編成と棲み分けが進んでいる.

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© 2000 経済地理学会
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