本稿では, 近年の日本における環境政策の1つのターゲットである循環型社会の特質を考察し, その実現のための地域産業振興政策としての「エコタウン事業」について, 「静脈産業」という概念を用いながら考察した.静脈産業の立地を考察する際は, その原料である廃棄物の収集をいかに効率的に行うか, 静脈産業から生み出された製品を, 動脈産業の流れの中で活用していく連鎖をいがに創造するか, という観点が重要であり, 原料の所在, 輸送コスト, 産業基盤の整備状況等の要因が反映される.経済産業省・環境省が各自治体のゼロ・エミッション構想を支援するために行っているエコタウン事業は, 静脈産業のインフラ整備にさまざまな助成を行う制度である.その事例として北九州市のエコタウン事業について, とくに5つの集積の利益を挙げながら検討した.