抄録
本稿は,50回の記念大会において「日本の経済地理学の半世紀と経済地理学会」というタイトルで記念講演したものを基調にして,戦後日本の経済地理学の潮流を筆者なりの視点で鳥瞰したものである.経済地理学の潮流を規定する要因として,(1)日本および世界の地域問題,(2)日本の地理学,(3)欧米の経済地理学,(4)経済学の基礎理論,以上の4つのそれぞれの時代の動向相互の影響のもとで営まれる4つの「知的空間」の作用の様態によって時期区分をした.「揺藍期」(1940年代後半〜1950年代前半)は伝統的地理学への批判による社会科学としての経済地理学の胎動,「離陸期」(1950年代後半〜1970年代前半)は,学会設立後の経済地誌論と経済立地論が並存しつつ成果をあげた時期,「発展期」(1970年代後半〜1990年代前半)は地域構造論の提起と理論的・実証的分析の進展,「転換期」(1990年代後半以降)は世界史的な時代の大転換を背景とした欧米の経済地理学の興隆と積極的な「輸入」として特徴づけられる.こうしたなかで,21世紀初頭の経済地理学は、経済の空間システムを対象としてきた地域構造論の再構築を通して,(1)世界経済,(2)国民経済,(3)地域経済,(4)企業経済,(5)情報経済,以上5つの分野の空間システムと相互のかかわりについて理論的・実証的かつ政策的な分析を行うことが求められる.