経済地理学年報
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過渡期にある大都市圏の郊外ニュータウン : 多摩ニュータウンを事例に(<特集>少子高齢化時代の地域再編と課題)
宮澤 仁
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2006 年 52 巻 4 号 p. 236-250

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抄録

日本の都市圏は,これまでの拡大・成長型の都市開発・都市経営を見直し,人口減少を前提とした新たな都市像を実現するための課題に直面している.その取組みにおいて重要視される地域のひとつが大都市圏の郊外である.本稿では,東京西郊の多摩ニュータウンを事例にとり上げ,(1)この地域が抱える問題群(人口減少・高齢化,居住問題,関係自治体の財政問題)を整理するとともに,(2)これからの地域のあり方としてガバメントからガバナンスへの移行を模索する多摩ニュータウンの現状について報告する.多摩ニュータウンでは,早期の開発地区において人口減少・高齢化,住宅の老朽化・陳腐化,公共施設の統廃合・閉鎖といった問題が先鋭的に発生しており,あわせてニュータウン開発による良好な都市基盤は将来大きな財政負担になることが予想されている.さらに,これまで開発主体であった都市再生機構と東京都はニュータウン開発の事業を終了した.このような変化を受けて関係自治体のひとつである多摩市では,NPO法人などの市民活動団体との協働によるまちづくりを展開している.地域の様々な主体による協治=ガバナンスへの移行を模索している多摩ニュータウンは,実験都市としての役割を依然として終えていないといえる.

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© 2006 経済地理学会
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