経済地理学年報
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中山間地域における地域問題と集落の対応(<特集>少子高齢化時代の地域再編と課題)
作野 広和
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2006 年 52 巻 4 号 p. 264-282

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抄録

国の総人口が継続的に減少する人口減少社会に突入した今日,中山間地域における地域問題は新たな局面を迎えている.特に,中山間地域における最小の地域単位である集落では,過疎・高齢化の一層の進展と,それに対応する新たな動きがみられる.このような集落の構造的な対応を「守り」と「攻め」の視点から考察することが本稿の目的である.まず,過疎・高齢化の進展に関してみると,山間集落でその状況は一段と厳しいことが確認された.特に,高齢者比率50%以上で戸数20戸未満の限界集落では後継者がほとんどみられない集落も存在している.これらの集落では後継者の帰還も期待できないため消滅する可能性が高い.また,農地についても高齢化により耕作放棄地が一層拡大する傾向にある.これを補完するために,中山間地域等直接支払など制度的な対応もあるが,集落を越えての協定が結ばれることは少なく,中山間地域における集落という強固な地域単位が障害となっている.このような集落の壁はコミュニティの面からも指摘できるが,新たな住民自治の在り方として,複数集落から構成される住民自治組織による柔軟な対応例もみられた.さらに,Iターンの受け入れによる定住人口の維持も選択肢として有効である.しかし,いくつかの「攻め」の要素は見いだせるものの,過疎・高齢化の流れは基本的に止めることができない.このような中,中山間地域ではなし崩し的に集落が消滅していく現象もみられている.そこで,秩序ある集落の撤退を意味する「むらおさめ」を検討していくことも,中山間地域においては検討すべき課題であろう.

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© 2006 経済地理学会
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